月1万円つみたてNISA 投資対象の「世界」を知る なぜ全世界株式やS&P500が選ばれるのか
月1万円からつみたてNISAを始め、将来の老後資金形成を目指す方が増えています。少額でも長期で継続することの重要性は広く認識されていますが、次に多くの方が悩むのが「どの投資信託を選べば良いか」という点ではないでしょうか。
特に、「全世界株式」や「S&P500」といった名前を聞く機会が多いかと思います。これらの投資信託は、多くのつみたてNISA利用者から選ばれていますが、具体的にどのような「世界」に投資しており、なぜ少額・長期投資に適しているのか、その理由をご存知でしょうか。
本記事では、月1万円からのつみたてNISAでよく選ばれるこれらの投資信託について、投資対象となる「世界」の意味や、なぜ多くの人に選ばれているのかを、分かりやすく解説いたします。ご自身の投資対象を選ぶ上での参考になれば幸いです。
つみたてNISA対象の投資信託とは
つみたてNISAの対象となるのは、金融庁が定めた基準を満たした特定の投資信託です。投資信託とは、多くの投資家から資金を集め、それをまとめて運用の専門家が株式や債券などに投資する金融商品です。投資家は、その運用成果に応じて利益(または損失)を受け取ります。
つみたてNISAの対象となる投資信託の多くは、「インデックスファンド」と呼ばれる種類です。インデックスファンドは、日経平均株価やTOPIX、S&P500、MSCI ACWIといった、特定の市場全体の動きを示す「指数(インデックス)」に連動することを目指して運用されます。
インデックスファンドは、個別の企業の選定を専門家が行うアクティブファンドに比べて、一般的に運用にかかる費用(信託報酬)が低い傾向にあります。また、指数に連動するため、分かりやすく、市場全体に分散投資できるという特徴があります。こうした理由から、長期・積立投資であるつみたてNISAにおいて、インデックスファンドは多くの投資家に選ばれています。
なぜ「世界」に投資するのか? 全世界株式ファンドの考え方
つみたてNISAの投資対象として「全世界株式」という言葉をよく目にします。これは具体的に、どのような「世界」に投資することを意味するのでしょうか。
「全世界株式」と名の付くインデックスファンドは、その名の通り、日本を含む先進国および新興国の主要な株式市場全体に幅広く分散投資することを目指しています。例えば、「MSCI ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)」や「FTSE Global All Cap Index」といった世界的な株価指数に連動するファンドがこれにあたります。
これらのファンドは、世界中の数千、数万といった膨大な数の企業に分散して投資を行います。これにより、特定の国や地域の経済状況に運用成績が大きく左右されるリスクを低減することが期待できます。どこか一つの国や地域の経済が一時的に低迷しても、他の地域の成長がそれを補う可能性があり、世界経済全体の長期的な成長を捉えることに主眼を置いています。
月1万円という少額であっても、全世界株式ファンドを選べば、文字通り世界中の主要な企業にまとめて投資しているのと同じ効果が得られます。無理のない金額で、特定の国に偏ることなく、世界の成長という大きな波に乗ることを目指す戦略と言えるでしょう。
なぜ「S&P500」が選ばれるのか? 米国市場への投資
全世界株式と並んで、あるいはそれ以上に人気が高いのが「S&P500」に連動するファンドです。S&P500とは、米国の主要な上場企業500社の株価を基に算出される指数です。
S&P500ファンドは、この米国の主要500社に投資します。なぜ特定の国である米国の、しかも500社に絞った指数がこれほど人気なのでしょうか。その理由の一つは、米国経済の規模と成長力です。米国は世界の経済を牽引する存在であり、革新的な技術を持つ企業やグローバルに事業を展開する企業が多数存在します。S&P500を構成する企業には、私たちの身の回りにある多くの製品やサービスを提供する世界的な優良企業が多く含まれています。
歴史的に見ても、米国株式市場は長期的に高い成長を遂げてきました。この力強い成長を享受したいと考える投資家にとって、S&P500は魅力的な投資対象となります。
ただし、S&P500ファンドは、全世界株式ファンドとは異なり、投資対象が米国一国に集中します。そのため、米国経済が長期的に停滞するような事態が発生した場合、その影響をより直接的に受けることになります。しかし、米国は分散投資が効いている国であるという考え方や、今後も米国経済が世界の中心であり続けるという期待から、 S&P500を選ぶ投資家も多くいらっしゃいます。
全世界株式 vs S&P500:どちらを選ぶかの考え方
全世界株式ファンドとS&P500ファンドは、どちらも低コストで分散投資が可能なインデックスファンドであり、つみたてNISAのような長期・積立投資には適しています。しかし、投資対象と分散の度合いが異なります。
- 全世界株式ファンド: 日本を含む全世界の株式に幅広く分散投資。特定国・地域のリスクを抑え、世界経済全体の成長を目指す。より広範な分散を重視する考え方。
- S&P500ファンド: 米国の主要500社に集中投資。米国経済の成長力を享受することに期待する。全世界に比べると分散の度合いは狭まるが、構成企業の多くがグローバル企業であるため、実質的な分散効果もあるという見方もできます。
どちらのファンドを選ぶかは、ご自身の投資に対する考え方やリスク許容度によります。特定の国に集中せず、リスクを分散して世界の成長を丸ごと捉えたいと考えるのであれば全世界株式。世界の経済成長を牽引してきた米国、特にS&P500構成企業の成長力に期待したいと考えるのであればS&P500が選択肢となります。もちろん、これらのファンドを組み合わせて投資することも可能です。
どちらを選んだとしても、重要なのは「月1万円」という無理のない金額で、長期にわたって積立を継続することです。
月1万円で「世界」に投資する意味
月1万円という金額は、一見すると少額に感じられるかもしれません。しかし、この少額を全世界株式やS&P500といったインデックスファンドを通して「世界」や「米国経済」に投資することには、大きな意味があります。
第一に、少額からでも世界中の企業や米国の優良企業に簡単に投資できるという点は、つみたてNISAとインデックスファンドの大きなメリットです。かつては多額の資金がなければ難しかった国際分散投資が、月1万円から実現できます。
第二に、月々一定額を買い付ける「ドルコスト平均法」の効果が最大限に活かされます。基準価額が高い時には少なく買い、低い時には多く買うため、長期的に見れば平均購入単価を抑える効果が期待できます。この方法は、特に価格変動のある資産への長期・積立投資において、感情的な判断を挟まずに淡々と投資を続けられる点で有効です。
そして何より、月1万円を長期にわたって継続することで、複利の効果を享受できます。運用益がさらに運用され、雪だるま式に資産が増えていく可能性があります。たとえ月1万円でも、10年、20年と続ければ、無視できない規模の資産形成につながる可能性を秘めています。
まとめ:まずは一歩を踏み出すこと
月1万円からのつみたてNISAで老後資金を形成する上で、どの投資信託を選ぶかは最初の重要なステップの一つです。「全世界株式」や「S&P500」といったインデックスファンドが多くの人に選ばれるのは、それぞれに異なる特徴があるものの、少額からでも効率的に分散投資を行い、長期的な世界の経済成長を取り込むことを目指せるからです。
どちらのファンドを選ぶにしても、ご自身の投資に対する考え方を整理し、その特徴を理解することが大切です。完璧な正解があるわけではありませんが、これらの代表的なファンドがどのような「世界」に投資しているのかを知ることは、安心して長期投資を続けるための支えとなるはずです。
最も重要なのは、月1万円という無理のない金額で、まずはつみたてNISAを始めてみることです。そして、選んだ投資対象に毎月コツコツと積み立てを続けることです。一歩踏み出し、長期投資のメリットを享受することを目指しましょう。