月1万円つみたてNISA 18年間の非課税期間終了後、あなたの資産はどうなる?
月1万円からのつみたてNISA、その非課税期間終了後の選択肢
月1万円という無理のない金額からつみたてNISAを始め、長期で老後資金の形成を目指されている方は多いかと存じます。つみたてNISA制度は、年間40万円までの投資で得た利益が最長18年間非課税となる大変メリットの大きい制度です。この「最長18年間」という非課税期間が終了した後、ご自身の積み立てた資産がどうなるのか、どのような選択肢があるのかについて、事前に理解しておくことは、長期的な資産形成において非常に重要です。
この記事では、月1万円からつみたてNISAを続けた場合を想定し、非課税期間が満了した資産の取り扱いについて、考えられる選択肢とその注意点、賢い判断のためのポイントを解説します。
つみたてNISAの非課税期間とは?改めて確認
つみたてNISA制度を利用して投資信託等を積み立てると、その年に投資した金額から得られた運用益(売却益や分配金)が、投資した年から数えて最長18年間非課税になります。例えば、2023年に投資した分は2040年末まで、2024年に投資した分は2041年末まで非課税期間が適用されるということです。
この非課税期間の終了日が近づいてきた際に、積み立てた資産についてどのような取り扱いが可能になるのかを把握しておく必要があります。
非課税期間終了時に考えられる3つの選択肢
つみたてNISAの非課税期間(18年間)が満了した時点の資産について、主に以下の3つの選択肢が考えられます。
- 課税口座(特定口座や一般口座)へ移管する
- 売却して現金化する
- (注:現行NISAからのロールオーバーは原則不可)
2024年から始まった新しいNISA制度への移管(ロールオーバー)については、現行NISA(つみたてNISA・一般NISA)からの直接的なロールオーバー制度は用意されていません。そのため、現行NISAの非課税期間終了時には、上記の1または2の対応を検討することになります。
それぞれの選択肢について詳しく見ていきましょう。
選択肢1:課税口座(特定口座・一般口座)へ移管する
非課税期間が終了した資産を、そのまま同じ証券会社などの課税口座(特定口座や一般口座)へ移管することができます。この場合、資産は引き続き保有できますが、移管後は運用益に対して原則20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の税金がかかります。
重要な注意点:みなし取得価額
課税口座へ移管する際に最も重要なのは、「みなし取得価額」です。非課税期間が終了し課税口座へ移管する時点での時価が、その資産の新たな取得価額とみなされます。
例えば、18年間積み立てた資産が、非課税期間終了時に100万円の評価額だったとします。この100万円が新たな取得価額とみなされ、その後120万円に値上がりして売却した場合、利益は20万円(120万円 - 100万円)となり、この20万円に対して課税されます。もし移管時の時価が80万円に下落していた場合、80万円がみなし取得価額となり、その後90万円で売却すれば利益は10万円(90万円 - 80万円)で課税、70万円で売却すれば損失は10万円(70万円 - 80万円)となります。
この「みなし取得価額」のルールを理解しておかないと、将来売却する際に想定外の税金が発生したり、逆に損失が出ているのに課税されてしまう(実際には利益が出たタイミングの時価で課税判断されるため、移管時の時価によっては評価損が出ていても課税される可能性がある)といった誤解を招く可能性があります。
選択肢2:売却して現金化する
非課税期間が終了するタイミング、あるいは終了後に課税口座へ移管してから、資産を売却して現金化することも可能です。
売却益が非課税となるのは、あくまで非課税期間中に発生した利益のみです。非課税期間終了後に課税口座へ移管し、その後さらに値上がりした分を売却して得た利益には税金がかかります。
月1万円の積立で18年間運用した場合、例えば年率3%で運用できたと仮定すると、約280万円程度の資産になっている可能性があります(これはあくまで試算であり、将来の運用成果を保証するものではありません)。この金額が老後資金として必要となる時期に売却・現金化するという選択肢は現実的です。
売却の判断は、老後資金が必要となる具体的な時期や、その時点での相場状況、他の資産状況などを総合的に考慮して行うことになります。
選択肢3:(現行NISAからの新NISAへのロールオーバーは原則不可)
2024年から始まった新しいNISA制度への直接的なロールオーバー(非課税枠を引き継いで移すこと)は、現行のつみたてNISA・一般NISAからは原則としてできません。
現行NISAの非課税期間が終了した資産は、上記の通り課税口座に移管するか売却することになります。ただし、新NISAの非課税保有限度額(生涯投資枠1,800万円)は、現行NISAとは別枠で利用できます。したがって、現行NISAで積み立てた資産の一部または全部を売却して得た資金を、改めて新NISAの成長投資枠やつみたて投資枠で投資するという方法は可能です。
月1万円積立の場合の検討ポイント
月1万円という少額からつみたてNISAを始めた場合、18年後の資産額は、運用状況にもよりますが、一般的には数百万〜1千万円程度となることが想定されます。この金額を、老後資金という目的においてどのように位置づけるかが、選択肢を判断する上でのポイントとなります。
- まとまった資金が必要な時期が近いか? 老後資金として、年金だけでは不足する分を補うために、非課税期間終了後すぐにでも取り崩しを始める必要があるのかどうかを検討します。必要であれば売却を検討します。
- まだ運用期間を続けたいか? 非課税期間は終了しても、資産全体としてはまだ運用を続け、さらなる増加を目指したいと考えるのであれば、課税口座への移管を選択し、引き続き運用を続けることも可能です。ただし、移管後の運用益には税金がかかることを理解しておく必要があります。
- 他の資産状況はどうか? つみたてNISA以外にも預貯金や他の投資がある場合は、それら全体の資産状況と合わせて、つみたてNISAの資産をどう活用するかを判断します。他の資産で当面の生活費や急な支出に備えられるなら、つみたてNISAの資産は引き続き運用に回すことも考えられます。
賢い選択をするためのステップ
非課税期間終了に向けて、慌てずに賢い選択をするためには、以下のステップで準備を進めることが有効です。
- 資産状況の確認: 非課税期間がいつ終了するのか、その時点での資産評価額がいくらになっているのかを確認します。金融機関のウェブサイト等で確認できます。
- 将来の資金計画との照らし合わせ: 老後資金としていつ頃、どのくらいの資金が必要になるのか、おおまかな計画と照らし合わせます。つみたてNISAの資産はその中でどの役割を果たすのかを考えます。
- 各選択肢の手続きと期限の確認: 課税口座への移管や売却の手続き方法、そして特に重要なのが手続きの期限です。非課税期間終了日が近づくと、金融機関から案内が届くことが一般的ですので、それに従って手続きを進めます。期限までに何もしなかった場合は、自動的に課税口座へ移管されることが一般的ですが、金融機関によって対応が異なる場合があるため、事前に確認しておくことを推奨します。
まとめ
月1万円という少額からでも、長期間つみたてNISAを活用して形成した資産は、将来の老後資金として大きな助けとなり得ます。18年間の非課税期間終了は、その資産の出口戦略を具体的に考える良い機会です。
非課税期間終了後の選択肢は、課税口座への移管、または売却による現金化が主なものとなります。どちらの選択肢を選ぶにしても、ご自身の将来の資金ニーズや他の資産状況、そして「みなし取得価額」のような制度上の注意点を理解しておくことが重要です。
事前に計画を立て、金融機関からの案内を確認しながら、ご自身の状況に合った賢い選択をすることで、長期にわたる資産形成の努力を、将来の安心へとつなげることができるでしょう。