月1万円つみたてNISA 運用中に急な出費!引き出しに関する考え方と注意点
月1万円で始めたつみたてNISA、運用中に資産が必要になったら
月1万円という無理のない金額からつみたてNISAを始め、老後資金の準備を進めている方も多いことと思います。長期にわたる資産形成において、積立を継続することが重要である一方で、人生には予期せぬ出来事がつきものです。病気や事故、あるいはその他の理由で、積み立てている資産の一部、または全てを急遽現金化する必要に迫られる可能性もゼロではありません。
このような状況になった際、「つみたてNISAで積み立てた資産は、運用期間中でも引き出せるのか」、「引き出すと何か不利益があるのか」といった疑問が生じるかもしれません。
本記事では、つみたてNISAの運用中に資産が必要になった場合の考え方、そして引き出しに関する注意点について解説します。
つみたてNISAは原則として長期・積立・分散投資のための制度
まず、つみたてNISAという制度の目的を改めて確認します。つみたてNISAは、特に少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度です。最長20年間(2023年までの制度)、年間40万円までの投資から得られる運用益が非課税となるため、主に将来のための資産形成、特に老後資金の準備に適しているとされています。
非課税のメリットを最大限に享受するためには、市場の短期的な変動に惑わされず、長期にわたってコツコツと積立・保有を続けることが望ましいとされています。これにより、複利の効果を享受しやすくなり、時間分散によってリスクを抑えながら、着実に資産を増やしていく可能性が高まります。
つみたてNISAの運用資産はいつでも引き出し可能か
つみたてNISA口座で積み立てた投資信託などの資産は、必要になればいつでも売却して現金化することが可能です。特定口座や一般口座での投資と同様に、金融機関のウェブサイト等を通じて、保有する投資信託を売却する手続きを行うことができます。
ただし、つみたてNISAは非課税制度であるため、通常の課税口座での売却とは異なる重要な注意点が存在します。
運用中に資産を引き出す際に知っておくべき注意点
つみたてNISAの運用中に資産を売却・引き出す場合、以下の点に留意する必要があります。
注意点1:売却した金額分の非課税投資枠は再利用できない
これが、つみたてNISAにおける途中引き出しの最も重要な注意点です。つみたてNISAには年間40万円の非課税投資枠が設定されていますが、一度この枠を使って投資した資産を売却しても、その売却した金額分の非課税投資枠がその年や将来にわたって復活することはありません。
例えば、ある年に40万円満額を積み立てた後、数ヶ月後に10万円分を売却したとします。この場合でも、その年の非課税投資枠は40万円を使ったままであり、売却した10万円分を再度非課税枠として利用することはできません。すでに使い切った枠は、引き出しによっても戻らないため、将来の非課税投資機会を失うことにつながります。
注意点2:売却益は非課税だが、元本割れのリスクもある
つみたてNISA口座での運用益は非課税であるため、売却時に利益が出ていれば、その利益に対して税金はかかりません。しかし、投資信託の価格は常に変動しており、売却時の市場環境によっては、投資した元本を下回る評価額になっている可能性もあります。その場合、損失が発生した状態で売却することになります。
注意点3:手続きは金融機関を通じて行う必要がある
保有資産を売却するためには、つみたてNISA口座を開設している金融機関(証券会社や銀行)のウェブサイトやアプリを通じて、売却したい投資信託の銘柄と数量(または金額)を指定して手続きを行います。手続き後、通常数営業日で指定の口座に現金が振り込まれます。
注意点4:一部売却も可能だが、影響を考慮する
必要な金額だけ、保有している投資信託の一部を売却することも可能です。例えば、特定の銘柄を〇〇口だけ売却するなど、柔軟な対応ができます。しかし、月1万円という少額での積立の場合、一部を売却しただけでも、全体の資産残高に対する影響が比較的大きくなる可能性があり、その後の資産形成ペースが鈍化する可能性があります。
引き出しを検討する前に考えたいこと
つみたてNISAで積み立てた資産の引き出しはいつでも可能ですが、非課税枠の再利用ができないという大きなデメリットがあります。そのため、安易な引き出しは、せっかくの長期・非課税のメリットを損なうことにつながります。
急遽資金が必要になった場合でも、すぐにつみたてNISA資産を取り崩すのではなく、以下の点を考慮することを推奨します。
- 他の資金での対応可能性: 預貯金や他の保有資産(ただし、他の投資資産の売却も慎重な判断が必要)で対応できないか検討する。
- 必要な金額の特定: 本当に必要な金額はいくらかを具体的に把握する。
- 引き出しが老後資金目標に与える影響: 必要額を引き出した場合、当初設定した老後資金目標額の達成がどの程度難しくなるかを把握する。
- 積立継続の可否: 引き出し後も積立を継続できるか、一時的に積立を停止する必要があるかなどを考慮し、今後の積立計画を再検討する。
まとめ
月1万円で無理なく老後資金の準備を進めるつみたてNISAは、長期の資産形成に非常に有効な制度です。運用中の資産は必要に応じていつでも売却して現金化することはできますが、売却した非課税投資枠は再利用できないという重要な仕組みがあります。
このため、急な資金需要が発生した場合でも、つみたてNISAの資産を取り崩すことは、将来的な非課税メリットを損なう可能性があるため、慎重な判断が求められます。可能な限り、つみたてNISAで積み立てた資産は老後資金として長期で保有・運用を続けることが、制度のメリットを最大限に活かすことにつながります。他の方法で資金を調達できないかを十分に検討し、それでもつみたてNISA資産を取り崩す必要がある場合は、その影響を十分に理解した上で判断することが重要です。