月1万円つみたてNISA 運用開始後の最初の5年間に確認すべきポイント
月1万円からつみたてNISAを始め、老後資金の準備に取り組んでいる方もいらっしゃるかと存じます。積立設定が完了し、毎月自動的に投資が行われるようになると、日々の値動きを細かく追う必要はありません。つみたてNISAは、長期にわたる積立・分散投資によって、リスクを抑えながら資産形成を目指す制度です。
しかし、投資を開始してからも、自身の資産がどのような状況にあるのかを把握することは重要です。特に運用を開始して最初の数年間は、今後の長い投資期間における市場との向き合い方を学ぶ上で大切な期間となります。ここでは、月1万円のつみたてNISA運用で、最初の5年間にどのような点に注目すべきか、そのポイントを解説いたします。
運用開始後の最初の5年間を振り返る意義
つみたてNISAの非課税期間は最長20年と長期にわたります。そのため、日々の小さな値動きに一喜一憂する必要はありません。しかし、最初の5年間で運用状況を確認することには、いくつかの意義があります。
- 市場の変動に慣れる: 実際に資産が増減するのを体験することで、市場の動きが自身の資産評価額にどう影響するかを体感できます。これは、長期投資を続ける上で冷静さを保つための良い機会となります。
- 自身のポートフォリオへの理解を深める: 投資信託を通じて、どのような資産(株式、債券など)に、どの地域(国内、先進国、新興国など)に投資しているのかを再認識できます。
- 確認する習慣をつける: 将来、資産額が大きくなった際にも適切に管理できるよう、定期的に運用状況を確認する習慣を身につけることができます。
最初の5年間は、将来の大きな資産形成に向けた「準備期間」「慣れる期間」と捉えることができます。
最初の5年間に確認すべき主なポイント
では、具体的にどのような点を確認すれば良いのでしょうか。
1. 評価額の推移
最も基本的な確認ポイントは、投資した元本に対して資産の評価額がどのように推移しているかです。
- 評価損益: 運用報告書や金融機関のウェブサイト・アプリで確認できる「評価損益」(投資元本に対する含み益または含み損)を確認しましょう。
- 総資産額: 積立を始めた月から現在までの合計投資額(元本)と、現在の評価額の差を見ます。
評価額は市場の状況によって変動します。たとえ評価損益がマイナスになっていても、それは一時的なものである可能性が高いです。つみたてNISAは長期投資が前提であり、短期的な値動きに惑わされず、積立を続けることが重要です。特に月1万円の少額積立の場合、最初の数年間は評価額の絶対額もまだ大きくないため、市場変動の影響を冷静に受け止めやすい時期と言えます。
2. 基準価額の動きと市場全体の連動性
投資信託の価値を示す「基準価額」がどのように動いているかを確認します。金融機関のサイトなどで、保有する投資信託の基準価額のチャートを見ることができます。
- チャート確認: 自身のファンドの基準価額チャートと、連動を目指している指数(例: S&P500、全世界株式など)の動きを比較してみましょう。概ね同じような動きをしていれば、ファンドは目標とする指数に沿った運用ができていると考えられます。
- 市場との関係: 主要なニュース(例: 金利変動、景気動向、企業の業績など)が、基準価額にどのように影響しているかを漠然と理解することも、市場への理解を深める上で役立ちます。
これは、日々のニュースを見る際に「これが自分の資産にどう関係するのだろうか」と考えるきっかけにもなります。
3. 保有ポートフォリオの確認
自身がどのような資産クラス(例: 株式、債券)や地域に投資しているのか、改めて確認しましょう。月1万円のつみたてNISAで投資できるのは通常、投資信託のみであり、多くの場合はバランス型ファンドか、特定の指数に連動するインデックスファンドを選択しているかと存じます。
- 投資対象の再確認: 選択した投資信託が、日本の株式市場全体、先進国株式市場全体、全世界の株式市場全体、あるいはこれらを組み合わせたものなど、具体的に何に投資しているのか、投資信託の説明資料などで確認します。
- 分散状況の把握: 選択した投資信託が、適切に分散投資を行っているかを確認します。多くのつみたてNISA対象ファンドは既に十分な分散がされていますが、自身の投資内容を理解しておくことは重要です。
自分が何に投資しているかを把握することで、市場のニュースを自分事として捉えやすくなります。
4. 運用報告書や月次レポートの確認
金融機関から送られてくる運用報告書や、ウェブサイトに掲載される月次レポートなどを、年に一度でも良いので確認する習慣をつけましょう。
- 内容の確認: 運用報告書には、ファンドの運用成績、組入資産の状況、費用などが記載されています。全てを詳細に理解する必要はありませんが、大まかな内容に目を通すことで、ファンドがどのような運用を行っているのかを知ることができます。
- コスト(信託報酬)の確認: 投資信託を保有している間にかかる費用である信託報酬が、事前に把握していた水準と変わっていないか確認しましょう。低コストであることは長期運用において重要な要素です。
これらの書類は、自身の資産がどのように運用されているのかを知るための重要な情報源です。
運用状況確認で見えてくること
最初の5年間でこれらの点を確認することで、市場の波や自身の資産の変動を体験し、長期投資の感覚を掴むことができます。評価損益がプラスになっている時期もあれば、マイナスになる時期もあるでしょう。特に月1万円という少額での開始であれば、大きな損失額になる可能性は低く、市場の下落局面を経験することは、むしろ長期投資を続ける上で貴重な学びとなります。
重要なのは、短期的な変動に一喜一憂せず、「ドルコスト平均法」(毎月一定額を積み立てることで、価格が高い時には少なく、低い時には多く購入することになり、結果として平均購入価格を抑える効果が期待できる方法)の効果を信じ、淡々と積立を続けることです。
必要に応じて検討できること
最初の5年間を経て、自身のライフプランや収入状況に変化があれば、月1万円の積立額を見直すことを検討しても良いかもしれません。収入が増え、もう少し積立額を増やせそうであれば、増額によって将来の資産額をより大きくできる可能性があります。もちろん、無理のない範囲で行うことが大前提です。
ファンドの変更は、基本的に慎重に検討すべきです。選定したファンドが目標とする指数から大きく乖離しているなど、明らかな問題がない限り、頻繁な変更は手数料や売買のタイミングの難しさから、かえって不利益になる可能性もあります。
まとめ
月1万円から始めるつみたてNISAの運用において、最初の5年間は、市場の値動きや自身の資産状況を確認し、長期投資の感覚を掴むための大切な期間です。この時期に確認すべき主なポイントは、評価額の推移、基準価額の動き、保有ポートフォリオ、そして運用報告書などの情報です。
たとえ評価額が一時的にマイナスになったとしても、それは長期投資の過程では自然なことです。焦らず、冷静に、そして淡々と積立を続けることが、月1万円からの資産形成を成功させる鍵となります。最初の5年間でこれらの確認を習慣化し、ご自身のペースで資産形成を進めていただければと存じます。