月1万円つみたてNISA 少額でもリスクを抑える分散投資の考え方
月1万円からつみたてNISAを始めることは、老後資金形成に向けた第一歩として大変有効です。少額であっても、長期にわたり資産を積み立てることで、複利の効果を味方につけることができます。しかし、投資にはリスクが伴うことも事実です。特に「少額だから大したリスクはないだろう」と考えるのは危険な場合があります。
本記事では、月1万円という金額でもしっかりとリスク管理を行うための重要な考え方である「分散投資」について解説します。
なぜ月1万円のつみたてNISAでも分散投資が重要なのか
投資におけるリスクとは、資産の価値が変動し、当初期待したリターンが得られない可能性を指します。特定の資産だけに集中して投資している場合、その資産の価格が大きく下落すると、資産全体の価値が大きく損なわれるリスクが高まります。
つみたてNISAで投資対象となる投資信託は、その仕組み上、様々な株式や債券などに分散投資を行っています。しかし、投資信託の種類によっては特定の国や特定の資産クラスに集中しているものもあります。例えば、ある国の株式市場全体に連動する投資信託は、その国の経済や企業業績に大きく影響を受けます。
月1万円という少額であっても、特定の資産に集中投資しているのと同じ状態になってしまうと、想定外の大きな値下がりが起こった際に、積み立ててきた資産が大きく目減りする可能性があります。特に長期で資産を形成していく過程では、様々な市場変動を経験する可能性があります。このような変動リスクを低減するために、複数の資産に分散して投資することが有効な戦略となります。
月1万円で分散投資を実現する方法
月1万円という積立金額でも、分散投資を実現する方法はいくつかあります。
1. 複数の投資信託に分けて積み立てる
最も直接的な方法の一つは、性質の異なる複数の投資信託を組み合わせて積み立てることです。例えば、以下のような組み合わせが考えられます。
- 国内株式型 + 海外株式型:地域を分散します。
- 株式型 + 債券型:資産クラスを分散します。
- 先進国型 + 新興国型:地域の分散をさらに細かく行います。
月1万円を複数のファンドに分ける場合、例えば5,000円ずつ2つのファンドに積み立てるといった設定が可能です。多くの金融機関では、100円といった少額から積立設定ができるため、月1万円を複数のファンドに分けることも十分に可能です。
この方法のメリットは、ご自身の運用方針に合わせて個別にファンドを選択できる点です。デメリットとしては、複数のファンドの運用状況を確認する必要があることや、ポートフォリオ全体のバランスを自分で管理する必要がある点が挙げられます。
2. バランス型投資信託を活用する
バランス型投資信託は、一つのファンドの中に国内外の株式、債券、リート(不動産投資信託)など、複数の資産クラスが組み込まれている投資信託です。ファンドがあらかじめ定めた配分比率に基づいて、これらの資産に分散投資を行います。
バランス型投資信託一本で積み立てることで、月1万円という金額でも自動的に複数の資産、地域への分散投資が実現できます。
この方法のメリットは、自分で複数のファンドを選んだり、ポートフォリオのバランスを調整したりする手間が省ける点です。ファンドを選べば、その後の運用は基本的にファンドマネージャーに任せることができます。デメリットとしては、資産配分をご自身で自由に決められない点や、ファンドによっては信託報酬がやや高めになる可能性がある点(ただし、つみたてNISA対象のバランス型ファンドは低コストなものが多いです)が挙げられます。
分散投資を意識したファンド選びのポイント
月1万円の積立で分散投資を実践する際には、以下の点を考慮してファンドを選ぶと良いでしょう。
- 投資対象: どのような資産(株式、債券など)に投資しているか、どのような地域(国内、先進国、新興国など)に投資しているかを確認します。複数のファンドを選ぶ場合は、それぞれが異なる資産や地域に投資しているものを選ぶことで、より効果的な分散が期待できます。バランス型ファンドを選ぶ場合は、どのような資産配分になっているかを確認します。
- コスト(信託報酬): 長期投資においては、運用にかかるコストがリターンに影響を与えます。つみたてNISAの対象商品は低コストなものが多いですが、同種のファンドであればより信託報酬の低いものを選ぶことが望ましいです。
- 純資産総額: ファンドの規模を示す純資産総額が大きすぎず小さすぎないか(安定して運用されているか)も一つの目安となります。
まとめ:少額でも賢くリスクを管理する
月1万円から始めるつみたてNISAにおいても、分散投資はリスクを管理し、長期で安定的な資産形成を目指す上で非常に重要な考え方です。複数の投資信託に分けて積み立てる方法や、バランス型投資信託を活用する方法など、ご自身の運用スタイルや手間に合わせて分散投資を実現することが可能です。
金融機関やつみたてNISA対象ファンドを選ぶ際には、ご自身がどのような分散投資を行いたいかを考慮し、目的に合ったファンドを選ぶようにしましょう。少額からでも賢くリスクを管理することで、無理なく着実に老後資金の準備を進めることができるでしょう。