月1万円つみたてNISA 突然の出費…積立を一時停止しても大丈夫?再開方法と影響を解説
月1万円からのつみたてNISAは、老後資金準備に向けた有効な手段の一つです。毎月無理のない金額でコツコツと積み立てることで、長期的な資産形成を目指せます。
しかし、人生には予期せぬ出来事がつきものです。病気やケガ、家族の事情、収入の減少などにより、一時的に積立を続けることが難しくなる状況が生じる可能性もゼロではありません。そのような場合、「つみたてNISAの積立を一時的にやめても大丈夫なのだろうか」「再開するにはどうすれば良いのだろうか」といった疑問を抱かれる方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、月1万円でつみたてNISAを運用されている方が、積立を一時停止したいと考えた場合の対応について、手続き方法や運用への影響を含めてご説明します。無理なく長期投資を継続していくための選択肢として、積立の一時停止・再開の仕組みを知っておくことは有効です。
つみたてNISAの積立は一時停止・再開が可能か
結論から申し上げますと、つみたてNISAの積立は、ご自身の意思でいつでも一時停止したり、再開したりすることが可能です。
金融機関で設定した積立設定を解除するか、積立金額を0円に変更することで、その後の積立を止めることができます。そして、積立を再開したい時期が来たら、再び積立設定を行う、あるいは金額を元の設定に戻すなどの手続きをすることで、積立を再開できます。
これは、つみたてNISAが個人の資産形成を支援するための制度であり、柔軟な対応が可能となっているためです。
積立を一時停止したいと考える理由
積立の一時停止を検討される理由としては、以下のようなものが考えられます。
- 急な大きな出費が発生した: 医療費、車の修理、家の修繕など、突発的にまとまった資金が必要になった場合。
- 収入が一時的に減少した: 病気や失業、転職活動期間などで収入が不安定になった場合。
- ライフイベントによる資金準備: 結婚、出産、教育費の準備などで、積立以外の資金需要が増えた場合。
- 他の資金計画との兼ね合い: 住宅購入の頭金や、自己啓発のための費用など、短期的に優先したい資金使途がある場合。
月1万円という金額であっても、こうした状況下では負担に感じられることがあるかもしれません。無理をして積立を継続するよりも、一時的に停止して家計のバランスを取り戻すことが、結果として長期的な資産形成を続けるために必要な場合もあります。
積立の一時停止・再開の手続き方法
積立の一時停止や再開の手続きは、つみたてNISA口座を開設している金融機関で行います。多くのネット証券では、ウェブサイト上のマイページや専用アプリから手続きが可能です。
一般的な流れは以下のようになります。
- 金融機関のウェブサイトまたはアプリにログインする。
- つみたてNISAまたは投資信託の積立設定に関するメニューに進む。
- 現在設定している積立設定を確認し、「変更」または「解除」を選択する。
- 一時停止したい場合は、積立金額を0円に変更するか、積立設定自体を解除する。
- 手続きを完了させる。
積立を再開したい場合も同様に、積立設定のメニューから新たな積立設定を行うか、金額を再度設定します。
注意点:
- 金融機関によって手続きの名称や画面構成は異なります。具体的な手順は、各金融機関のウェブサイトの案内を確認するか、カスタマーサポートに問い合わせるようにしてください。
- 積立設定の変更には締め日があります。多くの場合、変更が反映されるのは翌月からとなります。例えば、その月の積立実行日前に変更手続きを完了しても、手続きの締め日を過ぎている場合は、その月は積立が実行され、翌月から新しい設定が適用されるといったケースがあります。詳細は金融機関の案内を確認してください。
- 「毎日つみたて」や「複数ファンドの積立」を設定している場合は、全ての設定を確認し、一時停止したい対象を正確に変更する必要があります。
積立一時停止が運用に与える影響
積立を一時停止した場合、つみたてNISAの運用にいくつかの影響があります。
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非課税投資枠の利用:
- つみたてNISAには年間40万円の非課税投資枠があります。積立を一時停止している期間は、この非課税枠が利用されません。
- 使用しなかった非課税枠は翌年以降に持ち越すことはできません。例えば、年間40万円の枠に対し、積立停止により年間12万円(月1万円×12ヶ月)の積立ができなかった場合、その使わなかった28万円分の枠は消滅します。
- この点は、制度上の制約として理解しておく必要があります。
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複利効果:
- 複利効果は、運用で得た利益を再び投資に回すことで利益が利益を生む仕組みです。長期にわたる積立投資で資産が増える大きな要因の一つです。
- 積立を停止すると、新たな元本が投入されなくなるため、一時的に複利効果の恩恵が鈍化する可能性があります。
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ドルコスト平均法:
- ドルコスト平均法は、価格変動のある金融商品を定額で購入し続けることで、購入価格を平準化する手法です。価格が高いときには少なく買い、価格が低いときには多く買うことになり、リスクを抑えながら購入できるメリットがあります。
- 積立を停止すると、このドルコスト平均法の効果が中断されます。特に市場が下落している局面で積立を停止してしまうと、安い価格で多く購入できる機会を逃すことになります。
ただし、月1万円という金額での積立であり、数ヶ月から1年程度の比較的短い期間の一時停止であれば、長期(10年、20年以上)での運用全体に与える影響は限定的であると考えることもできます。最も重要なのは、可能になった時点で積立を再開し、再び長期投資のメリットを享受することです。
一時停止以外の選択肢も検討する
積立の一時停止を検討する状況においては、一時停止以外の選択肢も考慮する価値があります。
- 積立金額の減額: 月1万円の積立が難しいのであれば、一時的に月5千円や月千円など、さらに少額に減額して積立を継続することも可能です。これにより、非課税枠を完全に無駄にすることなく、ドルコスト平均法の効果も継続できます。
- ボーナス設定の解除: 毎月の積立とは別にボーナス月を設定している場合、ボーナス設定のみを解除するという選択肢もあります。
- 特定期間の積立停止: 年間の積立金額を変更する設定ではなく、特定の月の積立だけをスキップする設定が可能な金融機関もあります。
ご自身の家計状況や今後の見通しに合わせて、一時停止が最適なのか、それとも金額を減らすなどして継続する方が良いのかを検討することが大切です。
まとめ:無理なく続けるために、一時停止・再開の知識を活用する
月1万円からのつみたてNISAは、老後資金準備のための強力なツールです。しかし、人生の途中で積立を続けることが難しくなる場面があることは十分に考えられます。
つみたてNISAの積立は一時停止や再開が可能です。これは、この制度が利用者のライフプランに合わせて柔軟に対応できるよう設計されているためです。一時停止の手続きは金融機関のウェブサイト等から比較的簡単に行えますが、締め日などの注意点があります。
積立の一時停止は、非課税枠の未使用や複利効果・ドルコスト平均法の恩恵の一時的な中断といった影響を伴いますが、無理をして家計を圧迫するよりは、必要な時に一時停止を選択し、経済的に余裕ができた時点で再開することが、結果として長期的な資産形成の成功につながる場合があります。
また、一時停止だけでなく、積立金額の減額など、他の選択肢も検討可能です。
最も重要なのは、資産形成を「続けること」です。月1万円という少額でも、長期にわたって継続することで着実に資産は育っていきます。積立の一時停止や再開の仕組みを正しく理解し、ご自身の状況に合わせて賢く活用しながら、無理なくつみたてNISAでの老後資金準備を進めていただければと思います。